「得られるものは、かけがえのない仲間達と、困難に立ち向かう勇気」

東京大学運動会会長
東京大学総長
小宮山宏


新入生の皆さん、入学おめでとう。何よりも、これから東京大学で過ごす4年間が皆さんの人生にとってかけがえのない、意義深いものになるように心から祈念します。


皆さんにとって、受験勉強はこれまでの人生の中で最も勉強をした時期だったはずです。また、そうした中で、何か一つ壁を越えたと感じた瞬間もあったのではないでしょうか。勉強や研究について言えば、これから先、大学卒業後であっても、自分の専門となる分野でこれまで以上に集中的に深く取り組まなければならないときがあるでしょう。しかし、スポーツに大学卒業後さらに本気で打ち込むという人は、プロの選手を目指す人などごくわずかな人達だけだと思います。大学の4年間、本気でスポーツに取り組んでみるというのも素晴らしい選択だと思います。大会での優勝を目指す、自己の鍛錬のため、目的は何であれ、納得できるまで、自らを追い込むほどに没頭してみましょう。きっと、何かを越えたと感じられる瞬間が来るはずです。


私も学生のときは、アメリカンフットボールをしていました。4年生になって初めて1部リーグで戦うことになりましたが、それまでの2部リーグとは勝手が違い初戦から連戦連敗。しかし4連敗したあと、強豪明治に14−6で勝ったのです!今でもその時の事を思い出す度に興奮します。アメフトという本気でやるスポーツにめぐり合えて本当に良かった。本気になれないと面白くない、本気を出さないと身につかないし、良いことは何も起こらない。何でも本気になって取り組むことがどれほど大切で素晴らしいことかまさに実感できた瞬間でした。


スポーツという共通の言語を通じて、仲間同士あるいは他大学との競争相手との語らいの中で、他者が何を考えどういう気持ちであるかを理解する力が養われてきます。その力と経験が、今後皆さんが進んでいくそれぞれの道でも必ず活かされます。得られるものは勝利の美酒ではなく、かけがえのない仲間達と、困難に立ち向かう勇気なのです。